
断熱だけじゃないマルチ性能断熱材
セルローズファイバー
セルローズファイバーは、新聞紙をリサイクルして作った、紙の綿のような断熱材です。燃えにくくするためと、虫やカビを防ぐために、ホウ酸の仲間の薬が混ぜてあります。
細かい繊維がからみ合って、たくさんの空気を閉じ込めています。この空気が、熱や音を伝えにくくしてくれます。また、紙と同じように湿気を吸ったり吐いたりするので、壁の中がジメジメしにくくなります。
フルネスでは、壁や屋根にシートを張り、その中に専用の機械でぎゅっと吹き込みます。壁の場合、1㎥あたり55kg以上をしっかり詰めるのが基準です。


断熱材の良し悪しは、カタログの数字だけでは決まりません。「すき間なく入っているか」「何年たっても性能が落ちないか」「夏の日差しの熱をどれだけ受け止められるか」も大切です。
熱伝導率
下の表の数字は、材料の「熱伝導率(熱の伝わりやすさ)」です。
数字が小さいほど熱を通しにくく、断熱材として優秀です。
ただし実際の性能は「厚み」でも大きく変わり、同じ材料でも2倍の厚みにすれば、通る熱は半分になります。


工場で作るウレタンの板は数字が小さく優秀ですが、現場で吹き付けるウレタンはセルローズファイバーとほぼ同じです。セルローズファイバーは厚みを自由に変えられるので、必要なぶんだけ厚くして性能を上げられます。
出典:断熱建材協議会「断熱建材ガイドブック」ほか。

すき間が出来ない工法
断熱材にすき間があると、そこから熱が逃げてしまいます。壁のほんの5%にすき間があるだけで、逃げる熱は1割以上増えるといわれます(NYSERDA)。さらに、すき間の中を空気がぐるぐる回ると、壁の断熱性能が2〜3割も落ちることがあります(Straube)。
セルローズファイバーはシートの中に機械で吹き込むので、柱の間のななめの木(筋交い)や配管、コンセントのまわりまで、すみずみに入り込みます。マットや板の形の断熱材は、こうした出っ張りのまわりをきれいに埋めるのが難しく、すき間ができやすくなります。
ちなみに、よく聞く「気密(C値)」は家全体のすき間の量のことで、断熱材のすき間とは別のものです。断熱材にすき間があるかどうかを確かめる公的な検査は、今のところありません。

年月がたっても性能が落ちにくい
発泡プラスチック系の断熱材の中には、泡の中に「空気より熱を通しにくい特別なガス」を閉じ込めて、性能を上げているものがあります。ところがこのガスは、何年もかけて少しずつ空気と入れ替わり、そのぶん性能が下がっていきます。日本建築学会の研究(2008年)でも、硬質ウレタンフォームなどの性能が下がっていく様子が確かめられています。フルネスが外側の断熱に使うEPS(発泡スチロール)は、ほとんど変化しません。
セルローズファイバーは普通の空気で断熱しているので、ガスが抜けて性能が落ちる心配はありません。ただし、詰め方がゆるいと、時間とともに沈んで、上の方に断熱材のないところができてしまいます。そのためフルネスでは、実際に重さを量って、しっかり詰まっているかを確かめています。


熱をためこむ力 :夏の日差しの熱を部屋に通しにくい
セルローズファイバーは重さがあるぶん、熱をためこむ力が、ほかの断熱材の2倍から10倍以上あります。


出典:断熱建材協議会「断熱建材ガイドブック」ほかをもとにフルネス作成。
熱をためこむ力が大きく、熱を通しにくい材料は、表面が熱くなっても、反対側まで熱が届くのに時間がかかります。屋根の断熱なら、昼間の強い日差しの熱が部屋に届く前に日が沈み、ためこんだ熱は夜のうちに屋根の外へ逃げていきます。
フルネスでは、厚さ20cmのセルローズファイバーに、315Wの強い赤外線ライトを6時間当て続ける実験をしました。表面は100℃くらいまで熱くなりましたが、底の温度は2℃ほどしか上がらず、ライトを消してから10時間ほどで熱はほとんど抜けていきました(実験の詳細)。
これは実験用の箱での結果で、実際の家の室温を測ったものではありません。


呼吸する断熱材
セルローズファイバーは紙からできているので、湿気が多いときは吸い込み、乾いているときは吐き出します。壁の中の湿気を、ちょうどよく保ってくれる働きがあります。
断熱建材協議会「断熱建材ガイドブック」でも、湿度を高くしたり低くしたりすると、セルローズファイバーが湿気を吸ったり吐いたりして、重さが増えたり減ったりする様子が示されています。

国内の測定では、温度40℃・湿度85%のじめじめした環境で、セルローズファイバーは自分の重さの約12%(1kgあたり約120g)の水分を含んだ状態で落ち着きました。それだけ湿気を含んでも、断熱性能はほとんど落ちなかったと報告されています(川口・毛利 1983)。
吸い込んだ湿気は、いっぱいになる前に、乾いた側(家の外側など)へ少しずつ抜けていきます。また、プラスチック系の断熱材よりずっと多くの湿気を吸えることが、海外の研究でも確かめられています(Gnipほか, 2001)。

セルローズファイバーは結露しないのか?
セルローズファイバーを使えば絶対に結露しない、というわけではありません。
湿気を通しにくい合板などと接するところでは、特に寒い地域で結露することがあります。
壁のつくりに合わせて、結露しないか計算で確かめるのが確実です。

音を吸収する
壁や天井の中をセルローズファイバーですき間なく埋めると、音が伝わりにくくなります。
細かい繊維の間を通るうちに、音が吸い込まれていくためです。

国内の測定では、合板の間仕切り壁の中に厚さ10cmのセルローズファイバーを詰めると、空っぽの壁より音をさえぎる力が9〜16dB上がりました。天井に敷いた場合も、話し声くらいの高さの音で8〜9dB、高い音で14dB以上の効果があったと報告されています(川口・毛利 1983)。
アメリカの断熱材メーカーの試験では、壁の中にセルロースを詰めると、音をさえぎる力が約5〜9dB良くなったという結果があります(Greenfiber)。音が10dB下がると、人の耳には半分くらいの大きさに聞こえます。
実際にどれくらい音が変わるかは、防音実験の動画でご覧いただけます。
実験の条件は動画内の説明のとおり。
フルネスでも防音実験器を作成して実験したところ、子供用の防犯ブザーがほぼ聞こえなくなりました。この実験器は持ち運びが容易なので、ご希望があればお聞かせできますので気軽にお問い合わせください。この防音に関しては、百聞は一聞に如かずです。


セルローズファイバーには、ホウ酸の仲間の薬が混ぜてあります(使用製品のメーカー資料より)。断熱材全体に混ざっているので、壁の中のどこにでも効き目があります。
シロアリ・ゴキブリに効く仕組み
ホウ酸は、虫が食べると体の働きが止まり、ゆっくり効いてくる薬です。ゴキブリ退治の「ホウ酸だんご」や、シロアリ対策の薬として昔から使われています。紙を食べるシロアリや、体をなめて手入れする習性のある虫によく効きます。

壁の中で半永久的に効果を発揮
ホウ酸は蒸発してなくなることがないので、水で流されない限り、効き目がずっと続きます。一般的なシロアリの薬は、効果の保証がだいたい5年です。床下ならまた薬をまけますが、壁の中は壁をはがさないと薬をまけません。壁の中にずっと効くシロアリ対策があるのは、大きな安心です。

ずっと全身装備
5年ごとに足元だけ新調
フルネスでムカデをセルローズファイバーの中に入れて観察したところ、2日目ごろから動きが鈍くなり、最長で6日ほどで死にました。
ホウ酸は、虫が食べたり、体についたものをなめたりしないと効きません。虫を近寄らせない効果はないのでご注意ください。そのかわり、壁の中に入ってきた虫にだけ効くので、家のまわりの自然にはほとんど影響を与えません。
なんと、菌にも効くんです
ホウ酸は、カビや木を腐らせる菌も増えにくくします。
古い木の文化財を守るためにも、何十年も前から使われてきました(沢田正昭 1991)。
湿気をちょうどよく保つ働きと合わせて、壁の中をカビや腐れから守ります。
セルローズファイバーは「人の健康」も「家の健康」も守ってくれます。
ムカデを入れた箱をそのまま置いておいたら、セルローズファイバーの入っていないほうのムカデはカビがいっぱい生えていました。


人やペットには安全?
ホウ酸は目薬にも使われている成分です。人や動物の体に入っても、たまらずに尿と一緒に出ていきます。毒性は食塩と同じくらいとされていて、たくさん食べれば体に悪いのも食塩と同じです。工事が終われば壁の中に閉じ込められるので、住む人やペットが口にすることはありません。



新聞紙はよく燃えますが、セルローズファイバーには燃えないホウ酸の仲間の薬が混ぜてあるので、燃えにくく、火が広がりにくくなっています。
表面がこげても燃え広がらない
火を直接当てると表面が少し燃えますが、火を離すとすぐに消えます。フルネスの実験では、火が消えて10秒もしないうちに、手でさわれるくらいの温度まで下がりました。表面が炭になって、中まで火が進むのを防いでくれるためです。
燃えても青酸ガスが出にくい
原料が紙なので、燃えたときに猛毒の青酸ガスが出る心配はほとんどありません。
ただし、紙や木が燃えるときと同じように、一酸化炭素は出ます。




そもそも
原材料が古紙から
のリサイクル!
セルローズファイバーは新聞紙のリサイクル品です。
作るときに使うエネルギーが、ほかの断熱材と比べてとても少ないのが特長です。

取り壊すとき
取り出したセルローズファイバーは、状態が良ければもう一度機械で吹き込んで使えます。捨てる場合も、紙が原料なので燃やして処分でき、埋め立てる必要がありません。
よくある質問

Q, 蓄熱するなら、夏に家が暑くならないですか?
日差しで屋根が熱くなっても、熱は断熱材の表面近くでとどまり、部屋の中まではなかなか届きません。ためこんだ熱は夜のうちに屋根の外へ逃げていくので、部屋が暑くなる原因にはなりにくいと考えています。
土蔵と同じ
土蔵や昔の家などの土壁は熱伝導率が高い(熱が伝わりやすい)ですが、厚みを持たせて蓄熱する力によって熱を受け止めて中まで通さないという同じような仕組みになっています。
Q, 時間がたつと沈下しますよね?
不思議と「沈下しますか?」ではなく、「少しは沈下しますよね?」と聞かれることが多いです。
もちろんゆるく適当に詰めると沈みます。
フルネスでは壁に1㎥あたり55kg以上をしっかり詰め、現場毎に部分抜き取りで重さを量って確かめています。部分抜き取りによる部分確認、全体量を計算して使用量が合っているか確認する全体確認、施主様に実際に見て頂く目視確認、の三つの確認を徹底しています。
結果は施工完了報告書にまとめてお渡ししています。
Q, 湿気を吸いすぎてベチャベチャにならないですか?
基本、壁も屋根も湿気が抜けるように設計されていますので、室外か室内か湿気の低い方へ放出されますので安心してください。
Q, ホウ酸は人やペットに安全ですか?
虫や菌には効果がありますが、腎臓のある哺乳類には安全です。
目薬にも使われる成分で、体に入っても尿と一緒に出ていきます。工事が終われば壁の中に閉じ込められるので、ふだんの暮らしで口にすることはありません。
Q, 古民家の改修にも使えますか?
古民家の土壁や木材は、湿気を吸ったり吐いたりし、熱を蓄えることもできる素材です。昔の人の知恵を活かしつつ、現代の暑さにも耐え、冬にコタツにこもらなくてもよい家にするには、同じく調湿性と蓄熱性を持つセルローズファイバー断熱が最も適していると私は考えています。
