古民家にカビが多いのは、温かい冬を過ごそうとしたから
- ononoono28
- 2024年10月1日
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古民家といえば、木材をふんだんに使った風格ある外観、広々とした空間、そして伝統的な日本の住まいの良さが詰まった建物です。しかし、現代の暮らし方で古民家に住むと、特に冬場にカビや結露といった問題に悩まされることが少なくありません。これには、単に建物が古いということだけでなく、現代の暖房方法や生活スタイルが関係しているのです。この記事では、なぜ古民家でカビが多く発生するのか、そしてそれが「温かい冬」を過ごそうとした現代の暮らし方に起因している理由を詳しく見ていきます。
古民家の特徴:断熱性能はない
まず、古民家はその構造上、現代の建物と大きく異なります。最大の違いの一つが「断熱性能はない」という点です。古民家は自然と共生することを意識して建てられており、風通しを良くするために家の隙間が多いのが特徴です。冬でも家の中を風が通り抜け、室内は外気の影響を強く受ける構造になっています。これは、断熱(&気密)性能がほとんどないことを意味し、現代の密閉性の高い住宅とは全く異なる環境です。
古民家が建てられた当時は、家全体を暖めるような暮らし方は想定されておらず、隙間風を通して家全体の湿気や温度を調整していたのです。この構造自体は、湿気の多い日本では非常に合理的でしたが、現代の生活や暖房スタイルにはそぐわないものです。
昔は囲炉裏や火鉢による局所暖房だった
昔の日本の住まいでは、家全体を暖めるという概念はほとんどありませんでした。主に「囲炉裏(いろり)」や「火鉢」など、限られた場所を暖める局所暖房が中心でした。これにより、家の中全体の気温が大きく変化することなく、また空気の循環も自然に行われていたため、室内と外気との温度差は小さく、結露が発生しにくい状態が保たれていたのです。
たとえば、囲炉裏を中心に家族が集まり、寒い冬でも家全体を暖めることなく、必要な部分だけが温かいという暮らし方でした。これにより、室内の壁や窓あたりが暖まることも少なく、温度差が小さかったため、結露もそれほど発生しませんでした。
現代の全館暖房が結露を引き起こす
ところが、現代ではエアコンやファンヒーターといった全館暖房が主流です。これにより、家全体を均一に暖めようとしますが、この「均一に暖める」ことが古民家には不向きです。古民家では、断熱性能が低いため、外壁や窓付近が極端に冷えやすく、室内の暖かい空気がその冷えた場所に触れると、温度差によって結露が発生します。
特に問題が顕著なのが、次のような場所です。
押入れの床:押入れは床板が薄く、冬場には特に冷えやすく、室内との温度差で結露が起こりやすいです。布団や衣類を押し込んでおくと、湿気がこもってカビの原因になります。
すこし昔に改修した薄いフロアー材:数十年前に一度リフォームした古民家には、薄いフロアー材を下地無しで張られていることが多いです。この薄いフロア材は、断熱効果がほとんどありません。これにより、床の中と外で温度差が大きくなり結露が生じやすくなります。
アルミサッシの窓周り:アルミサッシは熱伝導率が高く、窓の周りが特に冷えやすいです。そのため、窓ガラスやサッシ部分で結露が発生しやすく、結果的にカビが生えやすくなります。
床下湿気だけの対策では足りない
結露やカビが発生すると、多くの人が「床下から湿気が上がってきているのではないか」と考えがちです。そのため、床下に防湿シートを敷いたり、床下換気扇を設置したりといった対策を行うことがよくあります。確かに床下の湿気は問題の一部ですが、古民家の場合、より重要なのは「断熱性能の改善」です。床下対策だけでは、結露やカビの根本的な解決には至らないことが多いのです。
家全体の温度差を考慮し、壁や窓、床などの断熱性能を向上させない限り、結露は繰り返し発生し続けます。これが、古民家でのカビ問題の本質です。
暖房方法と暮らし方の変化が結露を悪化させる
さらに、現代の生活様式も古民家における結露の原因となっています。現代の家は、昔に比べて窓を閉めっぱなしにすることが多くなっています。防犯やエネルギー効率を重視して、家全体を密閉状態にすることで、外気との通気を遮断しがちです。これにより、家の中に湿気がこもりやすくなり、結露が発生しやすくなります。
例えば、室内が中途半端に暖められた状態で、空気の流れが止まると、湿度が高い場所に水分が集まり、結露が発生します。風通しが悪く、湿気がこもることでカビのリスクがさらに高まるのです。
家全体を暖める現代の暮らし方と古民家は相性が悪い
このように見てみると、古民家と現代の暮らし方、特に「家全体を暖めようとする生活スタイル」は、あまり相性が良くないことがわかります。古民家はもともと、部分的な暖房と風通しを前提に設計されており、現代の密閉的で全体的な暖房方法は、その構造と相反してしまうのです。
現代的暖かい暮らしをしたいのであれば、古民家をリフォームする際に断熱性能を向上させることが不可欠です。
結論
古民家でカビが多く発生する原因は、元々想定されている古民家の暮らし方と現代の暖房方法・暮らし方とのミスマッチにあります。古民家は風通しを重視し、局所的な暖房で過ごす構造であるため、家全体を暖めようとする現代的な暮らし方は、結果的に結露を引き起こし、カビの発生を助長します。
古民家の良さを最大限に活かして自然と共に生きたいのであれば、自らの体と精神を寒さに耐えられるように鍛えることが必須です。(私も竪穴式住居に住んでいた時、しばらく過ごすうちに体が寒さに慣れてくる経験をしました。これもまたアリだと思っています。)
ただ、現代的な暖かい冬を過ごしたいのであれば、古民家の風通しの良さを潰してでも断熱性・気密性を上げることが必須です。それも中途半端に断熱気密をすれば結露水が外に抜けないまま壁内や床下にたまってしまうので、やるならば一定以上の知識と施工精度が求められます。







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